自己創出する生命

ページをいきつもどりつしながら時間をかけて読んだ。最近、立てつづけに小説ばかり読んできたせいか、この手の、多少は専門分野に入り込んだノンフィクションの読み方を半ば忘れかけていたようだ。読むのがラクな本ばかりではなく、もっと読むのに苦労をする本も普段から読んでおかなければ脳が萎縮するぞ、むむむ。
それはともかく、
本書の内容は大きくわけて、
1. 生命科学史をおおざっぱに俯瞰して解説したパート。
と、
2. 「生命誌」という「物の見方」を提示するパート。
の二種類に大別される。
読んでいて理解するのに時間がかかったのは、このうちの前者、「生命科学史をおおざっぱに俯瞰して解説した」パートだ。こちらの基礎知識が貧弱すぎた、っていうのが一番の原因だろうが(「遺伝子」と「ゲノム」の違いをぱぱっと答えられる人がどれほどいるだろう? あるいは、原核細胞と真核細胞の本質的な違いを何もみずに答えられる人は?)、後者の、「「生命誌」という「物の見方」を提示する」パートは思いのほか読みやすいし理解しやすい。
亀さがし。
あるいは、デカルトニュートンゲーテアリストテレスの「もののみかた」の最検証。
技術よりも科学。
進化とは延展。
個体は発生を繰り返す。
プロセスこそ生命。
まあ、そういうことだ。
実地に本書を読んでもらいたいので、あまり詳しくは要約しないでおこう。
巻末にある「あとがき」が、重版のたびに継ぎ足され、「この本の反響」を受けてフィードバックしていく思考を何度も記述しているように、さらにそれらを包括して「補遺」が加筆されているように、この本が「終わったところ」から発展していく思想もあるのだろう。
読むのに疲れる本だったが、同時に、とても有意義な時間でもあった。