アクセル・ワールド 4

アクセル・ワールド〈4〉蒼空への飛翔 (電撃文庫)

アクセル・ワールド〈4〉蒼空への飛翔 (電撃文庫)

前巻の「引き」があんまりにもあんまりだったんで、あのあとどうすんのかなーって思っていたら、なんだ、このめでたしめでたしな終わり方は。
前巻は、「リアルで様々なトラップをしかけて脅迫も辞さない狡猾で卑怯な敵」が出現して、それまでの主人公が築いてきた予定調和的な人間関係が壊される、それも完全に主人公サイドの人間だったと思っていた幼なじみに裏切られた!
ってところで「引き」に入っていたのだけど、その解決方法が面白いというか、この作品の場合、「リアルとゲーム」の二種類の世界でそれぞれに対処しなくてはならないのが独特で、当然、その対象法が異なってくるのが面白い。
基本、わたしは「ゲーム世界で」うんぬんというタイプの作品は好きではないのだけど、それはどうしてかといったら、作中で「さらにもうひとつ下の階層のフィクション」を出して主眼にしちゃうと、いくらでも都合のいいルールをでっちあげてぐだぐだご都合主義になりがちだからなんだよな。
その点、このシリーズは、主人公は(先輩とか友達とか幼なじみとはいるものの)学校ではピザなキモオタ扱いをされているわけだし、今回のエピソードでは、その設定がうまく生かされている。
リアル世界で地道に相手の弱みを握ろうとして人づてに情報収集したり、ゲームの世界で友人が必殺技の練習をしたり、で、いろいろ頑張るのはいいんだが、こんなに窮地に陥っているんなら、さっさとチームリーダーに相談すりゃ話が早いだろうに……とかも思ったりする。
実際、最後の詰め、一番おいしいところははリーダーがもってったしな。
しかし、「ゲームの中では時間の流れが違う」という設定はよくよく考えるといろいろな意味ですごいよな。
実際にあんなシステムあったら、文化とか経済が根底からひっくり返える。作業時間が必要な頭脳労働、むこうでやってこっちに持ってくれば、一瞬で膨大なマンパワー獲得できるわけだから、経験値稼ぎとかしている場合じゃなくなる。
今後は、おそらく「誰がどんな意図であんなゲームシステムを作り上げたのか」という点にも触れていきそうだし、先が楽しみなシリーズのひとつではある。