インターネット新時代

インターネット新世代 (岩波新書)

インターネット新世代 (岩波新書)

すげぇ。
なんか、久々に「新書」の底力を見せ付けられた気がする。
あらかじめいっておくと、本書に記載された内容に、目新しい情報はほとんどない。また、題材が題材なだけに内容が風化するのも早く、数年をまたずしてこの本は時代遅れな一冊と化してしまうだろう。
だか、新書はそれでいいのだ。
本書は、間違いなく「良質な新書」であると断言できる。現時点での、「インターネットを取り巻く諸状況」についての最適の案内書であり解説書だと思う。
歴史、技術、放送と通信、オンデマンドとダウンロード、コンテンツ販売、著作権、検閲とセキュリティ、フィルタリング、法とグローバル、文化、マーケット、そして、展望。
きわめて淡々とした文体ではあるが、触れるべき事柄には必ず言及し、内容に遺漏がない。それどころか、一見インターネットとの関わりが薄そうな周辺情報までしっかりと解説してあったりする。それでいて、あまり特定の項目に拘泥しすぎることもなく、広い視野で書くべき内容を選択しているように見受けられる。
例えば、この手の本で映像端子規格の種類と特性とか放送政策の歴史について、それなりに詳細な解説を読めるとは思わなかったよ。
ようするに、編集力……どういう情報を盛り込み、あるいは、省略するか、という見極めが、実に的確なのだ。
新書の文章量でもここまでクールにまとめることもできるんだな、と感心した一冊だった。