厭犬伝

厭犬伝

厭犬伝

ようは、木彫りの人形を使った格闘ゲーの話。
厭太郎、犬千代とかいう美少女美少年の対戦がクライマックスで、そこに至るまでの過程やら因縁やらとが延々と書いてあるわけだけど、どこか和風中世な世界観とかせっかく用意しても細かいところがどこかしらおなざりだし(国家の中枢にいつやつらがそんなにやすやすと重要機密盗まれるなよ!)、でも、肝心の対戦格闘シーンへの想いがいっぱい詰まっているからいいの、的な作りすぎだな、これは。
その熱さに乗れるかどうか? で、よむがわの評価もだいぶん変わってくるのではないか?
ってか、仏木とか合とからへんのディテールの書き込み用と、その他の部分のおなざりさが好対照。
特に、厭太郎周辺の人間関係の狭さは何とかならなかったのか? 結局、親族同士の愛憎劇いうか足の引っ張り合いじゃん、これ。
そうしたメインのドラマに関わってくる人々が、どこか既視感を感じさせる「書き割り感」に満ち溢れているのにたいして、途中から厭太郎に協力する人形使いたちとかの脇役連中の方がずっと生き生きとしていて、キャラクターとしてはよっほど魅力的に感じてしまうのは、作品の造作としては、やはりアンバランスなんだよなぁ……。
いろいろ瑕疵があるので傑作とはいいがたいけど、一部分だけやけに熱量を感じる作品でした。