儚い羊たちの祝宴

儚い羊たちの祝宴

儚い羊たちの祝宴

上流階級婦女子ご用達の女子校内の読書クラブ、「バベルの会」の関係者たちによって展開される連作短編集。とはいっても、学校内での様子が直接描かれることはなくって、主として、やんごとなきお家柄やその周辺の、お嬢様や使用人とか、そういった人々を題材としたスリラー集、という感じか。
「上流階級」といっても昔は羽振りはよかったけど目下没落中、とか、絵に描いたような成金とか、内情はいろいろ。また、その内情が原因で事件が起こったりするわけだが。
時代がかった物言いや言葉遣い、古典作品への言及や引用などが頻繁に繰り返されるブキッシュな文章には、確かに一定の「味わい」があり、モトネタがわかる人にはそれとなく伏線を提示することにもなっている。
その意味では、各編たしかにどんでん返しは用意されているものの、割と「わかる人にはわかる」書き方がなされているので、ミステリとしてはちょっと弱いかも。例えば、表題作の「羊」なんかは、かなり明確にオチがわかるから、「古色騒然とした舞台と文体で書かれたスリラー」集としてみるのが、やはり妥当だと思う。
とりあえず、各作品の犯人たちを一カ所に集めて、最後の一人になるまで殺しあいさせてみたくなった。
「身内に不幸がありまして」、「北の館の罪人」、「山荘秘聞」、「玉野五十鈴の誉れ」、「儚い羊たちの晩餐」、以上、五作品収録。