#133

 たまたま部屋に迷い込んできた夜の蝶を、少年は飼うことにした。
「夜の蝶は、ネオンが輝く夜の街でこそ、美しいものだよ」
 当然、両親は夜の蝶をその場で放すよう、説得したが無駄だった。
 虫籠にいれておいた夜の蝶は、案の定、たった一晩で無惨な姿に変わり果て、死骸となっていた。
「……あんなに、綺麗だったのに……」
 少年は少し泣いて、その後、庭に死骸を埋めた。
 たったそれだけの出来事だったが、そのことは、少年の記憶の底にいつまでも堆積することになる。