#107

今年もゴ×ラがやってきた。
大量殺戮兵器の亡霊だとか台風のような自然災害だとか様々な説が飛び交っていたが、正体は以前不明。わかっているのは、毎年夏になると日本の、それも決まって都市部に上陸して破壊の限りをつくす、ということだけだった。
もちろん、迎える側も手をこまねいていたわけではなく、英知を集結させた新兵器や、場合によっては同じような怪獣までを動員して共倒れを狙ったりもした。
だが、どのような手段に訴えようとも、ゴ×ラが絶滅することはなく、毎年夏になると沿岸部から山のような巨体を上陸させる。
半世紀以上にも渡ってそのような災害に見舞われ続けた人々は、充実した被災マニュアルや短期間での都市部を復興させるノウハウを充実させ、毎年の被災規模を予測し、それをも経済計画に組み込むようになった。
また、こうして蓄積された各種のノウハウや救済組織は、他国が天災に見回れたときも真っ先に現地に飛んで膨大な人々救済し、感謝と賞賛を送られた。
災い転じて福となす、というべきか……。
仮に、戦後、ゴ×ラが一度も出現しなかったとしたら……日本は、一度は復興を遂げるのかもしれないが、その後は、堕落した三流国家に脱したのではないか……とは、想像力に富んだ某友人の妄言である。