仮面ライダー 1971-1973

仮面ライダー 1971-1973

仮面ライダー 1971-1973

ご存じ「仮面ライダー」を現代的な視野から語り直したシリーズ。前に「誕生 71年」、「希望 72年」の二冊は上梓していたが、この都度完結編にあたる「流星 73年」を書き下ろし、三編を一冊に合本して出版。
「71年」というのは初代ライダーが放映された年でもあるわけで、しっかりと当時の世相も「背景」として描写しつつ、現代の「大人の」読者に対してもさほど不自然に移らないよう、最低限のリアリティを重視して再構築……という感じか。
大人の鑑賞にも耐えられるように……ということで、ショッカーとか改造人間とかにもそれなりの「理屈」が与えられている。
「大使」は老獪な縦横家だし、「大佐」はショッカーの技術供与を受けたナチスドイツの生き残り改造人間、「博士」は培養液に漂うことで辛うじて生きながらえるミュータント……といった具合に、もっともらしくリファインされている。
その中で「変わらない」のは、主人公本郷猛の、あまりにもストイックな孤高さ。
途中から、有形無形にバックアップする人々が現れてくるとはいえ、本書の本郷猛は、それら、支援してくれる人々からも一定の距離を置いて孤高を保とうとする。
日雇いのガテン仕事で糊口をしのぐ正義の改造人間、なんて人物造形を、いったい誰が想像しただろう? 若干シスコンの気がある設定になっているのは、原作者石ノ森章太郎へのオマージュか? いずれにしろ、「この」本郷猛のイメージは、やはり若き日の藤岡弘のイメージに、かなり重なる。
ついでに、藤岡弘自身による、ライダー撮影当時のことを語ったこの本も、かなりおもしろい。
仮面ライダー 本郷猛の真実 (ぶんか社文庫)

仮面ライダー 本郷猛の真実 (ぶんか社文庫)

ショッカーとショッカーに敵対する勢力との関係も、お互いに内通者や裏切りを前提としていたりしたグダグダ加減がどうにも「現代的」である……といえば、いえる。全編で活躍というか暗躍する「大使」の性格設定が、やっぱりいい。前線にでたり、戦闘とかにはぜんぜん参加しないけど、なんだかんだで深いところでストーリーに絡んできているしな。
おそらく、続けようと思えばいくらでも続けられるのだろうけど、この三冊分で一応、切り上げた思い切りの良さも含めて、かなりの好感触。