おもいでエマノン

おもいでエマノン (リュウコミックススペシャル)

おもいでエマノン (リュウコミックススペシャル)

梶尾真治の短編小説を、自他共に認める(むしろ、それが売りにさえなっている?)鶴田謙二がマンガ化。
これ、最初は、「……鶴田謙二の五年ぶりの新刊が原付き、って、どうよ?」的に見ていて、あまりいい印象を持たずに読み始めたんだけど……読み終わったらね、もう、「やられたっ!」の一言。
鶴田謙二、仕事はやたら遅いけど、やっぱうまいわ。
もともと、文字数的に、そんなに多くはない短編小説を150ページ弱の中編マンガに仕立て直しているわけで、小説ならさらっと流してあるような部分、あるいは省略しているような部分をうまーく絵的に補完して、作品の密度全体を上げている。
舞台となる「1967年」という時代の空気、主な舞台となる、フェリー船の中の乗客、船員、売店のおばさん……などのディテール。あるいは、漫画だと冗長になったり間延びして見えがちな、会話。エマノンの長々しい説明……など、マンガ化するさいに想定される不安要素を、一つ一つ丁寧に対処していった……みたいな感触が、ある。
いや本当、これ、いい仕事しています。