めもり星人

めもり星人 (ミッシィコミックス)

めもり星人 (ミッシィコミックス)

「みーむ」と名乗る女の子(の、形をした何者か)を狂言回しに出てくるのことだけが共通していて、あとは、舞台も登場人物も総取り替えの連作短編集。
様々な形の「記憶とヒト同士の関係性」の話しになっていくんだけど、各短編のタイトルが「幼年期の終わり」とか、「無伴奏ソナタ」とか、「停滞空間」とか、「夏への扉」とか、既存の作品名そのものを流用していたりするあたりに、この著者のこだわりがかいま見える。
幼年期の終わり」は、中学生の「思いこみによる偽造記憶」についての物語、「無伴奏ソナタ」は、ある近親相姦カップルの妹の側が、世間的なタブーと自分自身の気持ちとの軋轢について思い悩む話し、「停滞空間」は、自分の居場所について疑問を持ってしまった中年男による自問自答的な存在論、「夏への扉」は、「生まれなかった筈の子供」についての物語……と、それぞれ、「少年期」、「青年期」、「中年期」、最後に「生/死の狭間」に対応した物語となっている。
そうした、四つの物語の中に登場する様々な登場人物の前に現れては古今東西の名言を引用しながら介入してくる、正体のよく分からない少女は、「みーむ」と名乗っているわけで……動的であるよりは、静的。そして、柔らかなタッチの作画に似合わず、思弁的な内容だったりする。
とはいえ、全体の雰囲気としては、オールドSFっぽい……というより、あれだ、尾道三部作を撮っていた頃の大林組みたいな雰囲気が横溢する佳作。解説を、わざわざ梶尾真治に依頼したらしい……といえば、おおよその雰囲気が掴めるだろうか?
この人、メインの仕事はいわゆる成人向けマンガなんだけど、無理にエロ要素を作品にいれないほうが、なんかいい仕事をするよなぁ……とか、思ったり思わなかったり。
あと、装丁が意外に凝っている。