「脳のペースメーカー」インプラントで鬱病治療

http://wiredvision.jp/news/200705/2007052923.html

サンディエゴ発――精神科医によれば、迷走神経を通して脳に電気パルスを送り込む新しい医療技術は、重症の鬱病の抑制に、少なくとも薬物治療と同じくらいの効果があるという。

この『迷走神経刺激(VNS)』セラピーでは、直径約5センチメートル、厚さ約1センチメートルの円板状の装置を左の鎖骨近くの皮下に埋め込み、頸部の迷走神経に接続する。電池で駆動する円板は、規則的な電気的パルスを迷走神経に送る。電気パルスは迷走神経を通って、鬱病治療で重要な脳の数ヵ所に達する、とマサチューセッツ総合病院のDarin Dougherty博士は説明する。

(中略)
VNSは10年前からてんかんの治療に用いられている。てんかん治療では、発作の回数が約40%減少する例もある。てんかん治療で効果が現れていなくても患者が装置を使い続けようとするのを見て、医師たちは、重い鬱病の治療に使えるのではないかと思うようになった。

「効果が見られない(てんかん)患者に、装置を外していいか尋ねたら、ほとんどの患者は『いいえ、外さないでください』と懇願した。発作をうまく抑制できなかったケースでも、患者の精神状態は安定していた」と米国立衛生研究所(NIH)のMitchel Kling博士は言う。

(中略)
2005年10月に行なわれた研究では、重症の鬱病患者の約3分の1に効果が見られ、半分近くの患者が寛解した。91%の患者はその後の9ヵ月間、よい状態を保っている。すぐには効果が現れなかったという報告のあった患者の中にも、後に症状が改善し、寛解した例がある。

研究結果から、VNSセラピーはノルエピネフリンセロトニンに関わる中枢を刺激し、血流量を増やしてニューロンの活動を活性化することが分かっている。薬物療法も同じような目的で行なわれるが、成功率はそれほど高くない。研究チームは、VNSがなぜ効果を上げるのか完全には分からないと率直に述べている。
(中略)
従来の鬱病治療では、副作用が出たり、患者がもう良くなったと自分で思ったりして、治療が中断してしまう傾向があることが知られている。VNSセラピーなら、こうした鬱病治療の最大の問題をうまく回避できる。

脳部にインプラント埋め込むなんて、随分荒っぽい処置だなあ……とは思ったけど、てんかん治療では、前例があるのか。
「なんで効果があるのか、実のところよくわからない」とか、長期的にこの処置をした場合の後遺症とか副作用とか、詳しいところが、どうもはっきりとしない。
でも……てんかん治療に使用した場合、効果がなくてもインプラントを外そうとしない患者さんが多い……というのは、面白い心理だな。