雨の日に足を滑らせて以来、母は変わった。 雨が降ると外にでて両手を広げ、「あの子が、あの子が降ってくる」と繰り返し呟く。 それはわたしが母を抱きしめて、「わたしをみて」というまで続くのだった。
夏に彼女が去り、彼女の居た場所だけが夏のままぽっかりと残されていた。 気温三十度オーヴァーの人型の空間が、ベッドの上とかリビングとかに、気まぐれに滞留している。 ときおり、ぬくもりが欲しくなってそこに手や顔をいれてみる。
とり。
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