あけぼのソックス

あけぼのソックス

あけぼのソックス

わき水」、「友達トイレ」、「なぎさ公園」、「落日」、「黒レース白レース」、「青い満ち潮だった」、「桃色の手」、「黄金薄明」の八編を収録した短編集。
 なんといっても、巻頭に置かれた「わき水」が凄い。この一作品だけでも、充分、この一冊の値段分はペイできるのではないか? と思うくらいに凄い。
 一種の奇想を描いた作品なんだけど、そのヴィジュアルが主人公の成長や心情と完全にシンクロしていて、マンガ以外の媒体では表現できない域にまでいっている。終わり方も、見事。
「友達トイレ」、「なぎさ公園」、「落日」も、主人公の心情の移ろいがメインの物語。でも、「わき水」ほどの圧倒的なビジュアルとか奇想がない分、正直、印象は弱め。
「友達トイレ」にはまだしも非日常的な要素がはいっているんだけど、日常から非日常への推移が唐突でなんか無理矢理とってつけたような感じ。
「黒レース白レース」以降の作品は、どうも自伝的な色合いが濃いみたいだけど、どこまで本当でどこからが虚構なんだか、読んでいるこちらには判断つかないし、面白いんだか面白くないんだかもイマイチ判断しかねる。
「なるほど。こういう人がマンガ描くとこういう作品になるのか」って納得はするんだけどな。
 とりあえず、「わき水」は傑作。イチオシ。