竜と勇者と可愛いげのない私

竜と勇者と可愛げのない私 (電撃文庫)

竜と勇者と可愛げのない私 (電撃文庫)

なんという少女マンガメソッド。文章もストーリー展開も非常にわかりやすいというかこんなに先が読めていいのか? というくらいに「お約束」に忠実で……いやまあ、ラノベの本来のターゲットは低年齢層なわけだから、こんくらい「素直な作品」でいいのかも知れないな。これくらいシンプルなストーリーと文章なら中学生や小学生高学年くらいでも誤読のしようがない。
いや、皮肉でもなんでもなく、それくらいの年齢層でも「確実に理解できる」内容と語彙を使用して作品を仕上げる、っていうのも、それなりに高いスキルを要求されるもんでさ……まあ、さらに正直にぶっちゃけると、わたしみたいにひねた読者にとってみれば、内容の「薄さ」がひたすら食い足りなかったりするのだが、マーケット的にはこういう作品も必要なんだろう。
ラノベの、というより、「小説の」入門編として。
筋としては、能力は高いけど平民に生まれたおかげで正当に評価されていない、ついでにえば自分の容姿にもコンプレックスを抱いている女の子の一人称。で、この女の子が王家の命令でヘタレな王族と一緒に魔王討伐にむかう、という内容。
へたれ王子は戦いが嫌いな実は相当の実力の持ち主らしかったり、どうやら最強らしい正体不明のゴレームなメイドさんがついてきたり、向かった先で困っている村人を救おうとしてみると、魔王の眷属とか条件次第では人間の味方をしてくれる竜の人と出会ったり、と、どこかで見たり聞いたりしたような設定や展開がこれでもか突きつけられる。
コンプレックスのせいでツンツンしている主人公が、緊張感のないへたれくんの「素直な言葉」にだんだんほぐれていく様子なんかも、これはもう完全に往年の少女マンガメソッドだし……まあ、何度か繰り返しいっているけど、本当に意外性とか先端的なことは全然やってないけど、それゆえに感じる「予想する範囲内から一ミリもはみ出さない安定感」というのはある。
そんでもって、そういうオーソドックスな物語を必要とする読者層も、それなりにいるんだろうな。
わたし自身は続巻、読まないと思うけど。