幕末魔法士

幕末魔法士―Mage Revolution (電撃文庫)

幕末魔法士―Mage Revolution (電撃文庫)

おお。思ったよりもしっかり時代劇している。
考証は考証、絵空事絵空事という書き分けかたにセンスがあるなぁ。鍛練用の高温炉の独自開発は、史実の幕末でもさんざん苦労した事実があるし、攘夷派とそれ意外の士族や町人の温度差や対応も、(お約束のきらいはあるのだが)いかにも幕末って感じがする。
西洋の先進技術の一端として体系化した魔術の知識が伝えられて、古代エルフ語やらドワーフ語に通じた蘭学者が魔法を使える、という設定も、「時代劇と魔法」というミスマッチさも含めて、発想がユニーク。
その魔法使い蘭学者と、コンビを組む大魔術師シーボルトの孫、主役二人組にはそれぞれに秘密にしている素性があって、このデコボココンビがなりゆきで陰謀に巻き込まれて共通の敵に立ち向かっていく、というプロットも、あちがちといえばいえるのだが、その分、テンプレのバディ物として安心感を持って読める。
なかなかみえてこない敵の招待や目的、ピンチのときに登場して助けてくれる意外な味方、ド派手に魔法ぶっぱなしあったりアクションありどんでん返しありの最後のバトル、主役コンビの関係の推移……と、しっかりツボを押さえた娯楽時代劇しているんだよな、これ。
設定こそ突飛だが、話自体は極めてオーソドックスな、意外性はないけど安心して読めるエンタメ作品だった。