DDD 1、2

DDD 1 (講談社BOX)

DDD 1 (講談社BOX)

DDD 2 (講談社BOX)

DDD 2 (講談社BOX)

「ちゃんと面白がれるかなぁ……」とか心配して読みはじめたんだけど、杞憂だったというか普通に面白かった。
いや、この人の「空の境界」読んだとき、内容はともかく、なんだかヘンな方向に饒舌な文体に辟易した覚えがあるので、「この人、小説だと妙なところに力が入りすぎる人なんじゃないか……」とか思っていたから、読む前は少し心配していたのだよ。「Fate」なんかは普通にエンタメしているのに、「空の境界」は正直にちょっとギコチナさが抜けきれていなくて、それがある種のギコチナさとなっていちげんさんお断り的な読みにくさになっていたと思う。
ファンの人にいわせれば、そういうところも含めて「いい」んだろうけどさ。
で、この「DDD」、文体的には比較的まともだ。
わざと時系列を前後させた章構成とかDQNネーム(石杖所在、戸馬的、久織巻菜、石杖火鉈、鋳車和観とか。よくこんな難読ネームばかりホイホイ思いつくもんだ)なキャラしか出てこないネーミングセンスとかは「癖アリ」だけどさ、後者はともかく、前者は各種ミスリードを誘うための演出だと(読み終えれば)了解できるし、こちとらも、このていどの複雑さで根をあげるほど素直な読者ではない。
この手のカットバックは手法としてすでに定着しているし、作品的に必然性がありさえすれば全然気にならない。
この作品に限り、これだけ複雑な構成にしなければならない「必然性」は、しっかりとあるのだ。
一応の主人公、石杖所在くんの来歴とその他の主要登場人物、それに世界観の紹介を主機能とした一巻、「野球しようぜ!」で、石杖所在くんが主役というより他のキャラクターを活躍させるための媒体、一種の狂言回しに過ぎないことを明示した二巻、どちらもそれぞれに面白い。
石杖所在くんって本当、完全に巻き込まれ型のキャラで、内発的なモチベーションが欠如しているから、その他の「濃い」面子が活躍しだすと途端に影が薄くなる。
現に、一巻では久織巻菜、霧栖弥一郎の印象が一番強く、その他、シリーズとおしての脇キャラに戸馬的、石杖火鉈、日守秋星など、アクの強いのがぞろぞろ出てくるもんだから、どんどん影が薄くなっていく。
もっともこの作品、「悪魔憑き」という奇病が猛威を振るった現代、という「バックグラウンド」が一番の「主役」なのかもしれないが。
プロット的にみると、「トンデモナイ能力の持ち主がごろごろいて、騙しあったり潰しあったりする」といういかにも中二的というかラノベ的な代物を、ディテールのカキコミと各種「仕掛け」を駆使して、大人の鑑賞にも堪えられるモノにした手腕は素直に評価したい。
フェイト/ステイナイト[レアルタ・ヌア] PlayStation 2 the Best

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空の境界 上 (講談社ノベルス)

空の境界 上 (講談社ノベルス)