夏海紗音と不思議な世界 1

なんとうか、実にラノベらしいラノベ。その、「リアリティのなさ」なんてはじめっから問題にしていない、という意味で。
いや、本来のターゲットである低年齢層相手だと、これで構わないのかも知れないけどさ。
まず、徹底して「日常性」が排除されているのな、これ。主人公の少年は、メインヒロンの夏海紗音から「アリス+ハルヒ」的な引き寄せをくらって早々に異世界に飛ばされて、終盤までその異世界を舞台としてあれやこれやる。
帆船というマニアックな舞台を詳細に書いてあるのはポイント高いんだけど、丁寧なリサーチのあとが作品の面白さにあまり寄与しているようには見えないあたりが、なんとも。
夏海紗音を「引き寄せ体質」って設定してしまったことで、根本的な部分でご都合主義にできているんだよな、これ。作品構造の根源的にご都合主義が組み込まれている、というか。
逆にいうと、こんだけご都合主義マンセーな世界でないと、まともに帆船とか海洋物とか秘境冒険物、書けないのかも知れないが。
いろいろなキャラクターがでてくるけど、どの人もあまり複雑な陰影はなしで、単純な造型。
ある意味では、現実逃避という目的を徹底的に追究している、といえないこともないけど、それを自覚的にやっているのだとすれば、それはそれでたいしたもんだ。
徹頭徹尾、絵空事。ある意味では、今のラノベの「空気」に正直に対応した作品なんだろうな。
ニーズはあるのかも知れないが、個人的な好みではない。