#141

星詠みは、満天の星空を見上げ、太古から受け継がれた秘術を駆使して、星の配置や動きから複雑な事象を読み取る。
神々や魔物の人知を超えた働きとか戦乱やら謀略やらがうごめく人間たちの喜悲劇やら、いずれも、星詠み自身からは時間的空間的に遠く隔たった世界の出来事がほとんどなので、星詠みは、自分が読み取った事物が果たして現実にそった観測であるのか、それとも、単なる妄想の産物であるのか、判断にこまっている。
それが仕事であるから、 「詠んだ」ことに関しては翌朝詳細に書きつけ、そのまま王宮の書庫に納める手順が整えられているわけだが、星詠みは、自身の仕事について、いまひとつ、誇りとか矜持とかが持てないのであった。