ぷりるん

ぷりるん。~特殊相対性幸福論序説~ (一迅社文庫)

ぷりるん。~特殊相対性幸福論序説~ (一迅社文庫)

これは、必読でしょう。
道具だてとかキャラクター配置は、何というか実にもう、典型的なハーレム物のラノベとかエロゲそのもの、なんだよな、これ。
かいがいしく主人公の世話を焼きたがる、血の繋がらない義妹。
何故か、最近になって何かと絡んでくるクラスメイト。
部活の先輩に、放浪生活に入ってほとんど家に寄りつかない義理の姉。
こんなのがいて、だいたいにおいて美少女とか美女で、何かと主人公を気にかけている……らしい。
っと、類型的なのは、あくまでこれらの「設定」まで。
でも、実際に読みはじめると、感触的には、ずいぶんと、違う。
積極的に攻勢をかけてくるクラスメイトは、セックス依存症で主人公以外にもつきあっている男子生徒が複数いる……ことが、途中で明らかになる。
でも、主人公とも、半ば強引に迫られて、関係を持ってしまう。
何年かぶりで帰ってきた奔放な姉は、家族の中で主人公だけが養子で、血の繋がりがないことを告げ、主人公に迫る。
主人公が姉に迫られているところを目撃した妹は、家でして行き先も告げずに何日も外泊するようになる……。
などなど。
もちろん、これだけのことがいっぺんに起これば、主人公の方も無傷とはいかず、途中から神経衰弱めいた様相を呈してくるのが……周囲の人たちと話し合い、徐々に、関係を回復していく。
つまり、感触ということでいえば、ラノベというよりもメインストリーム作品のそれの方に、よっぽど近い。最初の基本設定こそちょいとアレだが、メインテーマはかなり普遍的なコミュニケーション不全とそこからの回復、だ。
主人公もたいがいにアレなんだけど……この作品のキャラクターたちは、どこかしら、いい具合に「リアルに」歪んでいる。お互いの歪みを直視しあい、奇跡とかを抜きにして、地道に関係を構築し直す過程は、やはり読みごたえがある。