とある飛空士への恋歌 2

とある飛空士への恋歌 2 (ガガガ文庫)

とある飛空士への恋歌 2 (ガガガ文庫)

「序章」でヒロイン視点で過去のあれこれが説明されて、「ああ、こういう風にもっていくのか」と納得。ある意味、無自覚に過去を呪っていればいい、のほほんとした主人公よりも、このヒロインの方が、重いものを背負っている、ともいえる。
異世界ファンタジーで、ラブコメで、学園物で……と、おおよそ売れそうな要素を周到にぶち込んで、なおかつ、二重三重四重に、将来悲劇的な展開になりそうな不安要素も散りばめられていく。
もっとも、それぞれの不安要素にも、悲劇的展開をそれなりに回避できそうな伏線も、用意されているわけだが。
例えば、主人公とヒロインの出自に関する因縁については、二人の過去を知っていて、よき理解者になりそうなキャラクターを用意する、とか……。
学校で、飛行機の操縦訓練を受けるシーンとかでも、割合に細かく書き込まれていて、ディテールがしっかりと作り込まれている手応えを感じる。今回は特に、料理のシーンが、書き込まれすぎだった。あんなに細かく書く必要があるのか、と、思うくらいに。
今更だが、水場があればいくらでも燃料が補給できる水素動力の飛行機、ってアイテムとしては、いいな……。
最後の最後に、「そっちの方に持っていくのか」という「意外な展開」も用意されていて、前巻を読んだときはまだもやもやっとした感慨しか抱けなかったが、この巻から、この物語が目指している方向性、ともいうべきものが、かなり明瞭に提示されてきた感じ。
このシリーズは、思っていたよりもずっと面白くなる……かも、知れない。