チョコリエッタ

チョコリエッタ (角川文庫)

チョコリエッタ (角川文庫)

薄くて短時間で読み終えることが出来て、でもしっかりとしたモノが、読んだ後に残るような、そんな一冊。
一言でようやくしてしまえば「犬になりたかった少女の話し」ということになってしまうのだが、それを単純なファンタジーとか隠喩とかに終わらせずにしっかりと「現代」でしかない風俗を背景にして書ききっている。
進路の希望アンケートに「犬」と書いて「これ、本気だろう?」と主人公に尋ねてくる教師とか、親代わり叔母とか、あまり深い関わりを持っていない父親とか、部活の先輩で「犬としての主人公」を映画に撮影してくれる先輩とか……一見して日常的ではあるけど、どこか「普通」からは踏み外しているような人たちがそれなりに出てきて、濃淡の差こそあれ、主人公と関わっていく。
ズバンと大きな落ちがあるわけでもないのだが、おそらく、この「空気」こそがこの本の目的なのだろうなぁ、と思った。
ま、通勤の復路の間に読み切ってしまう分量の本だから、その程度でいいのか。