この広い世界にふたりぼっち 3

この広い世界にふたりぼっちIII (MF文庫J)

この広い世界にふたりぼっちIII (MF文庫J)

黒髪ロン毛セーラー服がいきなり白狼とけこーんするところからはじまったこの物語も、三冊目でとりあえず終了。
終わってみれば、徹頭徹尾「タイトル通り」の内容だった。
北欧神話ベースの神様とか魔法をネタにしたファンタジー、ではあるのだけれど、そうした背景やなんかはあまり重要ではなく、「塚木咲希」というどうしようもなく孤独な主人公の「寄る辺無さ」ばかりが印象に残っている。白い狼とはそれなりに仲がいいわけだけど、それでもやっぱり、この子はいつも「一人」だよな。
タイトルは「ふたりぼっち」ってなっているけど、この一人と一匹は、それぞれの孤独を再確認するために一緒にいるようにも見えるし。
シリーズ通しての敵役、蝶と赤い狼は、悪いわけではないんだけど、やっぱり最後まで影が薄かった。動機が百合系の執着だと、どうしても感情移入がしづらい読者もいるのさ。
しかし、このシリーズは主役からして交配不可能な異種族間カップルだけあって、普通の男女関係をとことん否定する構造になっていたな。男女の組み合わせででてきたキャラで普通のカップルって、結局皆無だったし。恋愛感情かそれに類するものは、同性間とか異種族間とか、(生物化学的な意味で)最初から不毛と分かっている組み合わせしか登場していない。
生々しい恋愛関係を忌諱するようなバイアスが、書く人の中にあるのかも知れない。
作風からみて、おそらく、この著者さんは女性だと予想しているのだけど、記号的な百合全開展開をしてくれるより、こういう間接的な書き方の方は、どことなく艶っぽい気がする。