曲矢さんのエア彼氏

曲矢さんのエア彼氏 (ガガガ文庫)

曲矢さんのエア彼氏 (ガガガ文庫)

これ……読んでいて、ところどころで目眩を感じた。
いや……エア彼氏とかエア彼女とかまだいいんだ。某所でそれ風の発言を多々みてきているので「こういう発想」をする人たちについては、それなりに免疫は出来ているし。
でも、そのエア彼氏とかエア彼女が「見える人」と「見えない人」がいて……というあたりの設定で、頭がぐらぐらしてくる。
妄想が第三者に見えたらそれはもはや妄想ではない。
「傾いた人間は、それと同じ傾きを持った人間にしか見えない」
ふむ。人として軸がぶれている、というわけか。
靱帯故障してバスケを断念した主人公、木村カント(なんてぇネーミングだよ、おい)くんは真夜中に見えない騎馬隊に襲われているエア彼氏持ちの少女、曲矢サンノに出会う。
カントくんは曲矢さんの「エア彼氏」を目撃することは出来ても、自分自身のエア彼女はいない。いろいろあって、自分も「エア彼女」を獲得しようと奮起したカントくんは、曲矢さんに弟子入りして「バスケ子先輩」を想像(=想像)しようとし、そこにカントくんの幼なじみが介入してきたり、映画「エア彼女」のオーディションが行われたり……といったストーリー展開なのだが……。
「空想上の彼氏彼女」を持っているやつががぼこぼこ当然のように登場する設定からしてアレだし、「エア彼女を持つ人限定のオーディション」ってなんだよそら。そんな映画に需要あるのか? どこで公開するんだそれ?
などなど、途中、つっこみを入れたくなる場面が奔出する。
ネタか? この話しは徹頭徹尾ネタなのか? とか思っていると、途中からそれなりにシリアスな展開になってくるし、最後あたりでとんでもないどんでん返しはあるしで、読んでいて非常に混乱した一冊だった。
いや、たいがいに等のべの設定というのは荒唐無稽なものが多いとはいえ……この作品くらい、「作者の狙い」がどこにあるのか推測がつかない設定もかえって珍しい。
作者はこれ、マジでやっているのか、ネタでやっているのか?
脳内に妹とか恋人を普通に飼っている人なら、案外素直に楽しめるのかも知れないけどな。