秋期限定栗きんとん事件

秋期限定栗きんとん事件〈上〉 (創元推理文庫)

秋期限定栗きんとん事件〈上〉 (創元推理文庫)

秋期限定栗きんとん事件 下 (創元推理文庫 M よ 1-6)

秋期限定栗きんとん事件 下 (創元推理文庫 M よ 1-6)

小市民シリーズの第三弾にして上下二巻組。
タイトルが「秋期限定」とかいいながら、物語内では小鳩くんと小山内さんの二年秋から三年秋まで、約一年間の時間が流れている。とはいえ、前の巻末でああいうことになったから、二人が揃って行動することはほとんどなく、単独で別個に彼女とか彼氏が出来て、ばらばらに動いている。
だいたい、小鳩くんからみたパートと小山内さんの彼氏になる瓜野くんからみたパート、ほぼ交互に語られ、新聞部の瓜野くんが連続放火事件を追いかけて……という形。新聞部の部活で発行する新聞が月一の発行で、その新聞に掲載される放火魔関連の記事が大きなヒントになるから、どうしても物語内時間の経過も大きくなってしまうのだな。
この小山内さんからみたら一学年下になる瓜野くんというのがねぇ……。
まあ、「普通の高校生なら、こんなもんか」、とは思うけど……自意識過剰で視野が狭すぎる。これでは、小山内さんの相手は無理だろ。
一方、小鳩くんの相手の中丸さんも、今時の女子高生としては普通だと思うのだけど……小鳩くん方が全然異性として意識していないのがアリアリと分かってしまって、こちらはこちらで可哀想になってくる。
放火魔の謎の方は……残念ながら、途中で「こんなところかな?」と想像したとおりの真相だった。
作中で「特に存在理由も説明されておらず、なおかつ、登場頻度が多いキャラクター」の存在理由を想像していたら、まあ、だいたいのところは見えてくる。
作品の主眼としてはそんなところにはなく、相変わらずの小山内さんの暗躍ぶりと、膨大な容疑者の中から一見迂遠ともいえる手段を使って、段階を踏んで真の容疑者を絞っていく小鳩くんの行動力……なんだろうな。
なんだかんだいって、この二人、いいコンビだよ。いろいろな意味で。