プシュケの涙

プシュケの涙 (電撃文庫)

プシュケの涙 (電撃文庫)

傑作じゃないのか、これは。
まず、ミステリとして、かなりしっかりしている。大小さまざまな「ひっかけ」が伏線として巧みに組み込まれていて、しかもそれに嫌みがない。
「事件以後」を書いた前半部分と、「事件以前」を書いた後半部分……という二部構成も、かなり効果的。
それで、謎解きやいっかけ以外の部分……高校生たちを主人公とした群像劇としても、間違いなく成功していると思う。ネタバレになるので詳細を説明することはできないけど、登場するキャラクター一人一人が、どうしようもなく痛々しい。
作中で語られる事件そのものは、いくつもの偶然が重なった結果で、非常に苦々しい印象を受ける代物なのだけど、「複数のキャラクターの主観」を通してみると、奇妙な透明感さえ感じられるのは、なんか不思議な感触だった。
ラノベのレーベルではなく、ごく普通の文芸書として出版されていてもまるで違和感がないくらい、完成度が高い作品だった。