回送電車

回送電車 (中公文庫)

回送電車 (中公文庫)

堀江敏幸のエッセイ集。
実は最初、エッセイではなく小説だと思いこんで読み始めたのだが、すぐに自分の思いこみが間違いであったことに気づかされる。
基本的に「作家の独白」にはあまり興味がない……というより、正直に言うと、「中の人」にはあまり興味が持てないし、基本的に「舞台裏」はあんまり見たいたちではない。
それでも、この人なら、優れた散文にはなっているだろう……と思いつつ、読み進めていく。もともと文章がいいので、読み始めるとすいすいなのだが……。
あー。
この人は、割と「モノ」に対するフェティッシュな執着があるなぁ……。
例えば、方眼紙。例えば、オート三輪車。例えば、古本。例えば、タイプライター。例えば、洗濯機。例えば、電信柱……。
まあ、いわれてみれば……作品の方にも、そういう傾向は結構でているのだけど……具体的な「モノ」に関する拘りが、それに付随する過去の経験やら今までに読んできた著作からの知識やら……の、いいinedxとして機能してていて、そうした拘りを契機としてちょうどいい短さの随筆が展開する……という構成は、読んでいて、なかなかに快い。