歩いても 歩いても

歩いても歩いても [DVD]

歩いても歩いても [DVD]

是枝監督らしい地味な映画。地味、なんだけれども、観ているうちにじわじわくる感じ。
「法事に集まった人々」をちょっと引いた距離からじっくり観る……体裁をとっているのだが、この一家のいかにもありがちな人間関係とかが、細かな、時には断片的なやりとりから徐々に浮かび上がってくる様子は、やはり「うまい」。
樹木希林「母」とすでに嫁いで子供も家庭も持っているyouの「娘」とが、大根と人参を、包丁とピューラーを使って皮むきしている冒頭のカットからして、ごくごく日常的な会話の内容とともに、世代の差、意識の差を、効果的に伝えてくる。
総白髪で「無口で不器用な父」を演じる原田芳雄も、いい。こういう「老け役」やるような年齢になったんだな、この人も。
なんといっても「不在の兄」にいつまでもコンプレックスを抱き続けている阿部寛の細やかな、抑制の効いた挙動がいい。この人、テレビドラマとかでやっているコミカルで大げさな演技より、こっちの抑え気味の、シリアス寄り役の方が、ずっといいんじゃないだろうか?
「どこの家庭にでもありそうな会話」を積み重ねてこの家族の来歴と、多少の差はあれ、誰もがその存在を意識している「不在の兄=故人」が徐々に明かしていく構成も巧妙だと思うし、画面全体から、「これぞ、小津以来積み上げてきた日本映画の伝統芸能」的な雰囲気も、「いかにも」な感じがして、いい。
最初にもいった通り、全般に地味でがっと盛り上がるタイプの作品ではないのだけど、観終わった後、ほっと肩の力が抜けているようは安心感を感じる映画だった。