#60

ここ数日の雨続きで、猛暑が続いていた頃には道ばたでカラカラに乾燥し、ゴルフボールからテニスボール大に丸まって転がっていた野良河童たちも本来の勢いを取り戻し、路地裏や路肩をぴしぱしと雨水を跳ね上げながら駆け回るようになっている。鴉や野良猫と違い、野良河童は生ゴミの袋を破って荒らすような真似をすることもないので、多少目につくようになってもたいていの人は意識に上らせることもなく放置しているので、その実、春から秋口にかけて町中にはかなりの数に上る。寒さが本格的になると、彼らは全身に剛毛を生やし、野良河童から山童へと変化して山へと帰っていき、また暖かくなる時期まで人目につくことはない。


はてなハイク超短編より転載。