空の中

空の中 (角川文庫)

空の中 (角川文庫)

これは、素直におもしろかったなぁ。
未確認飛行物体とのファースト・コンタクト・テーマと、高校生同士やら女性パイロットと飛行機技師とかのカップルとの顛末を描いた部分とか、いいバランスで絡み合っている。
あれだ、作中の「ディック」は、ソラリスの海がもう少しものわかり良くなって、個体になってかなーり上空をぷかぷか浮かんでいるイメージなんだけど……あいつ、ああいう進化の過程を経て、どうしてあそこまで高度な知性体になったのかが、すっげぇ不思議だよなぁ。
仮に、知性が発達したとしても、異質すぎて、人間とコミュニケートできない可能性のが大きかっただろうに。
大人同士のカップルは、なんか、片方が必要以上に意地張っているようにみえたので、正直、どうでもよかったけど、高校生同士のカップルは、なんかこの年頃特有の「あやうさ」がよく出ていて、なかなかよかったと思う。
基本的に、色恋沙汰にはあまり興味がないのだが、事故でなくなった父親の存在感を、拾ってきたフェイクで埋め合わせようとする心理は、理解も納得も出来る。それを心配する周囲の人たちの視点も、よく分かる。
自衛隊とか政治的な事情とかがそこここでスパイスにはなっているけど、あんまりミリタリーっぽい展開にはならず、むしろ、圧倒的な能力を持っているディックやらフェイクやらと、人間側とが、どのように意志の疎通を行い、自分たちとの間に「いい関係」を築こうとするのか、という部分に、より比重が置かれているように思う。
途中、妨害者として自然保護団体がでてくるけど……こっちは、狂言回しというより、その団体を操っている少女の動機の方が、より重要……なんだろうな。
結局、これは、「人間たちの物語」なんだと思う。