落語娘

落語娘 (講談社文庫)

落語娘 (講談社文庫)

「落語娘」と「ええから加減」の二作品収録。
それぞれ、落語と漫才の世界を題材にした作品だが、どちらも綺麗にまとまっている。
こじんまりと端正にしあがっている「ええから加減」も、短さの割に含みが多い寡作なのだが、女落語家の視点から呪われたネタの再演をもくろむ師匠の姿を描く表題作の方が、数段、深い。
「いつまでも前座の女落語家」という設定が、師弟制度や因習に支配される芸事の世界を「見せる」のに効果を発揮されているし、そこで主流の古典派からはずれた一見俗物風の師匠も、過去や人物像が紹介されるにつれて陰影を深くしていく。
「高座にかける度に落語家の命を奪うネタ」などという仕掛けは、むしろ表層的な要素であって、一連の騒動が浮き彫りにするのは、それぞれ顕れ方に差違はあるものの、芸事に取り付かれた人々のありようだ。
これ、この夏に映画化されすそうだけど……大丈夫かいな?
とても、映像向けの作品とは思われないのだが……。