円環少女 8

相変わらず、容赦のない展開がいいなぁ。
前半は浅利ケイツのヘタレっぷりで笑いをとって、話しが進むにつれてどんどんのっぴきならない事態に突入する。
相手が手練れの魔法使い騎士五千人、って……ここまで来ると、立派な戦争だよなぁ。どっからどうみても。
そして、戦争ともなれば、練度が高く数が多く周到に準備をしていたものが、勝つ。
だから、烏合の衆で命令系統がイマイチはっきりとしておらず頭数でも劣り連携を不得手とする公館側の勝利は、原理上、あり得ないといってもいい。
作中で「社会VS個人」という対比が繰り返し強調されるわけだが、その社会の中のリアルと、「幾多の隣接する魔法世界とそこからやってきた魔法使いたち」という「特異な設定」を緩衝するための機構として発達してきた公館は、その基本的な性質として、成立からして場当たり的であり、非常に半端で不安定な存在でもある。
一応、何百年も前から存在していた、という「設定」になっていたけど……こんな、管轄官庁もはっきりしないような超法規的組織、いくら魔法がらみの設定があるにせよ、普通なら存在すらできないよなぁ……。
しかも、「専任係官」が、十名以下って……関わる魔法世界の数や魔法使いの人数を考えると、絶対に処理能力が追っつかなくてパンクしている筈。なんのトラブルがなくっても、事務的な処理だけで。
聖騎士との対決は、そんなわけでほぼ予想通りの趨勢に落ち着くわけですけど、もう一方の軸(というか、このシリーズ的は、どちあかというとこっちが主軸なんだろうけど)仁の受難ストーリーもなかなか凄いところまでやっているなぁ……。
この人、善人であろうとしているから、かえって苦悩が増えるタイプで……見ていて、実に痛々しい。
今回は、VSメイゼル戦のかなりガチはいったバトルとか、きずなの心理描写とか、三者三様の内面の描き方が深くなっていて、それぞれに悩んでいるのだなぁ……と、納得できる。
あと、脇役で光っているのは、エレオノールとかセラ・バラードなんだけど……この辺の力の入れようが、かなり性差別入っているように思うのは気のせいか?