零と羊飼い

零と羊飼い (一迅社文庫)

零と羊飼い (一迅社文庫)

とりあえず、公式サイトのあらすじだけをみて、トンデモ系だと見切りをつけなくてよかった……。
「地球を消し飛ぶような隕石が飛来中で、それを打ち消すために、超能力者が必要で……」大まかな点はこのあらすじの通りなんだけの、その「超能力」が「レス系」とよばれる、この作品独自の設定であることに、このあらすじは触れていない。トンデモは設定であることは確かだけど、そのトンデモさにもそれなりの摂理と法則性、ルールってものが付加されているわけね。これがあるのとないのとでは、作品全体の印象がかなり変わってくる。
序盤は、某大国による世界中からの超能力者集め。
中盤は、集められた超能力者たち同士で行われる、「この中の誰が貧乏くじを引くか決定する」会議。
終盤は、それまでに明示された超能力者たちの事情、それに、この計画に関わりを持った周辺の人びとの事情と……ある能力者の能力によって「書かれる」、あり得たかも知れない何通りもの未来。
この、「何通りもの未来」が続々と提示される部分は、まんま、ゲームブック的であり、一種のパラレル・ワールドを少しづつ垣間見るメタ・フィクション的な趣向となっていて、なかなかに興味深い。
また、どんな選択をしても悲劇的な結末しか残っていない……と知ったときの、その超能力者の絶望感も、甚大。
で、もって……結末付近に至って、ある解決策が提示されるんだけど……。
あー。
これは、唐突っていうか、インチキっていうか、ご都合主義もほどほどにしろよ、って感じなんだけど……。
まあ。
こんな強引な結末を用意しなければ、ひどく後味の悪い物語になっていただけだから、これはこれでいいのか。