冒険野郎伝説アヴァンチュリエ

冒険野郎伝説 アヴァンチュリエ (BEAM COMIX)

冒険野郎伝説 アヴァンチュリエ (BEAM COMIX)

まず最初にいっておくと、これは「買い」。もう絶対に、「買い」。
面白いとかなんとかいうよりも、「深かった」。
表層的にストーリーをみると、どれもこれも通り一遍の使い古されたセオリーを踏んでいて、一見、目新しい物はどこにもないような錯覚にさえ、陥るのだが……でも、実際に読んでみると……久々に、じっくりと作品世界に身を浸すことができた。理屈抜き、で。
この「心地よさ」は、いったいどこに由来するのだろうか? まだ読み終わったばかりで、考えがまとまっていないのだけど……。
どこかレトロな、他に類例がない……平均的な日本人読者の目から見ると、奇妙にディフォルメの効いた、エキゾチックな画風は、最初こそ取っつきにくいように感じるかも知れないけど、話しを追い始めると、すぐに気にならなくなる。
それどころか、キャラクターそれぞれの喜怒哀楽を表現するのに、なるほど、適した誇張なのだな……と、深く納得する。
この本のページには、人物にせよ風景にせよ、あるいは、小道具や動物、機械などにも、それぞれ表情がある。
収録されている、時代も舞台も異にする、八つの短編も、短いながらにそれぞれきっちりと独立して完結している小世界。
ご都合主義な所もあるけど、根底で、どこかシニカルで、単純な、予定調和的ハッピーエンドを否定する物語群は、どんなに突拍子もない出来事が起ころうとも、やはり「われわれの世界」と地続きのリアリティを持っているように思える。
人生は、甘くない。だからこそ、夢想を欲する。
作者、クリストフ・クリタ氏の公認サイト:
http://www.kourita.com/