#34

「……あっ……」
うっかり、携帯をトイレに落としてしまった……と、思ったら、身長三十センチ見当の小さな女神様が現れた。
「あなたが今落としたのは、この金の携帯ですか? それともこの銀の携帯ですか? あるいは、この普通の携帯ですか……」
などと、恒例の質問をぶつけてくる。
その身長で金、銀、普通の三つの携帯を抱えているのは、とても大儀そうに見える。
「いや、普通にキャリアのカスタマーセンターに連絡するから……」
と、とりあえず答えておいておく。だって、どの携帯も、まともに使えそうな気がしないし……。
それから、ジト目で女神様を軽く睨み、
「……痴女?」
と、訊いてみた。
するとその女神様は、顔どころか全身を真っ赤にして恥じ入りつつ、
「す、好きでこんなことをしているわけではないんですからねっ!」
と叫んで、三つ持っていたうち普通の携帯だけを放りだし、便器の中に消えた。


はてなハイク超短編より転載。