#27

「どうか、ご用を……」
「いいから、黙って休んでろ」
おれがガキの頃から家に置いてあるロボットが、いよいよどうにもならなくなってきた。
メーカー保証なんて十年以上も前に切れているし、それどころか、修理用のパーツも、もう在庫がないという。
「どうか、ご用を……」
「いいから、黙って休んでろ」
何しろ、多忙な両親に代わってほとんど一体だけでおれを育ててくれたような機体だ。
正常に作動しなくなったとはいえ、シャットダウンをする決断は、なかなかできない。
「どうか、ご用を……」
「いいから、黙って休んでろ」
多少、煩わしいと思うことはあっても、今のところ、何もさせない限りは安全だ。
また、省電力をとことん追求した機体でもあったので、運用コストも極めて小さい。
「……もうわたしでは、何のお役にもたてませんか?」
ロボットは、知性はあるが感情のない目でおれをみる。
おれはというと、お前はもう、役立たずの無用の長物なのだよ、ということを、そのロボットに切り出せないで立ちつくす。


はてなハイク超短編より転載。