#24

「それで君がこーひーようせいというわけだ」
「はい」
マグカップとり少し背が高いかな、という背丈の小人さんが、にこやかに頷く。
「……それで、そのこーひーようせいさんが、うちにいったいなんの用かな?」
招かれざる客は、夜中にいきなり押しかけてくるどこぞの女だけで間に合っている。
「……用、というか……」
自称・こーひーようせいさんは、可愛らしく首を傾げてみせる。
「こーひーようせいは、おいしくコーヒーをいれる方のところに現れて、おいしくコーヒーをいただくのです」
にこにこにこ。
「……あー……」
おれは数秒ほど、唸ってから聞きかえした。
「それだけ?」
「それだけ」
即答かよ。
しかたがないので、おれはキッチンの中で一番小さな器を捜しまわって、ようやく滅多に使わないお猪口を見つけ、そこに入れ直したコーヒーを注いでやった。
せっかく自称、こーひーようせいさん、などというレアな生き物が来たのだから、粗略に扱ったりしたら人類の名折れである。
その自称、こーひーようせいさんとやらは、そいつにとっては一抱えもあるお猪口を傾けながら、
「……やっぱりコーヒーは、いれたての熱いのが最高ですねー……」
などと知った風なことをほざいている。
「……いいけどな、別に……」
おれも椅子に座り、自分の分のコーヒーを啜った。
椿事ではあったが、それ以外は特に変わったことのない、るったりとした週末の午後だった。
「……あいつに話しても、絶対信じねーだろーなー……」
「あいつって誰ですか?」
「ベッドで寝ているよ」


はてなハイク超短編より転載。