#23

「深い思索には集中力が必要であり、その集中力を発揮するには、うまいコーヒーが必要だ」
「だからって夜中にいきなり来るなよ。
いつもいっているけど」
「知っている中で、一番うまいコーヒーを出すのが君なのだから仕方がない」
「おれの都合は無視かい」
「どうせ、何の用事もないんだろう?」
「ないけどな……」
おれは彼女の頭に手のひらをおいて軽く叩く。
「……コーヒーの代金は後で労働で返して貰うぞ」
……そいつは楽しみだ、と、彼女は澄ました顔で答え、慎重にコーヒーを啜った。
ぶっきらぼうな口調に似合わず彼女は、不器用で寂しがり屋だった。


はてなハイク超短編より転載。