椿三十郎

やはり、脚本がいいんだよな、これは。チャンバラの体裁を整えているけど、大半は情報戦だし。
意外に、というよりは、かなーり元ネタに忠実なリメイクだった。そのせいで、元ネタにあってリメイクにないものが鮮明になった部分もあるのだが。
モノクロ、モノラルだった旧作よりも格段とクリアに、鮮明になったのは音や色。全体に、画面が明るい。というより、夜間のシーンでも、隅々まで明るく照らしすぎで「闇」や「暗がかり」がない。
それと、音響が良くなったのはいいけど、劇伴の音楽は、元ネタ(ずんじゃんじゃんずんじゃんじゃんずんずんじゃんじゃんずんずっちゃちゃちゃ、ってやつね)の力強さに到底かなわない。
三十郎役が三船敏郎織田裕二に変わって、貫禄がぐっと減って愛嬌がぐんと増した、のと同様、全般的に作りが軽くなった。織田裕二は、目が大きく肉が薄いので、表情の演技が分かりやすく、三船よりと比べると、格段に幼く見える。
キャストで良かったのは、室戸役の豊川悦司。元では、仲代達也がやった役だが、豊川版の室戸も、流石にシャープな存在感がある。
しかし、最後の決闘シーンの改変はなぁ……。
今の役者に、あれ以上の殺陣をやれ、っていうのが無理なのは分かるが。
シナリオがモトネタに忠実、なのはいいが、「こんなに細かい所まで同じにする必要はないのに……」と思うところもあった。例えば、「馬面の叔父」という箇所も、元のキャストなら違和感なのだが、藤田まことだと、そんなに馬面と強調するほどではないよ。
まあ、リメイク物としては、頑張った部類はいるのではないかな。

椿三十郎<普及版> [DVD]

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