泣く男

泣く男―山田芳裕短編集 (双葉文庫 や 17-2 名作シリーズ)

泣く男―山田芳裕短編集 (双葉文庫 や 17-2 名作シリーズ)

「木田」、「変身男(前編、後編、2)」、「佐々霧兵吾 円錐剣(前編、後編)」、「ウルトラ伴」、「泣く男」、収録。
山田芳裕はそれこそ、デビュー作の「大正野郎」からだいたい見ているわけだけど、一貫して追及しているテーマっていうのは、「かっこよさ」なんだよね。というか、主人公が「おれってかっこいいー」となるしぃーに陶酔できる瞬間が来るか/来ないか、という境目で、ドラマを作る。あるいは、その拘りぶりを誇張して描くことによって、滑稽に見せる。
それは「大正野郎」とか「しわあせ」、あるいは、近作の「へうげもの」みたいに、直線的に「外見上のかっこうよさ=ファッション」みたいな形で表出することもあるし、もう少しわかりにくい、スポーツや競技の勝ち負けに拘る、内面的な充足感の有無で図られることもある。
だから、時折登場する「主人公のライバルキャラ」というのは、「主人公とは異なるイデオロギーの持ち主」ではなくて、あくまで「主人公とは違った美学の持ち主」として、描かれることが多い。
そういう意味では、戦国武将に仮託して「美学と美学のぶつかり合い」を描いた「へうげもの」は、山田芳裕が「描くべくして描いた」作品なんじゃなかろうか? ということを、この短編集を読んで思いましたです。はい。