中国で『第二の人生』

http://www.tokyo-np.co.jp/00/kur/20070205/ftu_____kur_____001.shtml

個人や図書館の不要本
 財団法人日本科学協会(東京都港区)が、中国の大学に本を贈る活動を続けている。個人や図書館の不要となった本がリユース(再利用)され、昨年末で百五十万冊を超えた。中には定年退職者が「本にもセカンドライフを」と技術書などを寄贈する例も目立つという。 (草間俊介)

 協会は一九九七年から、「教育・研究図書有効活用プロジェクト」を開始。清華大学や大連外国語学院、上海交通大学など二十五大学に、累計で百五十一万二千七百冊を贈った。大学側は専用の日本語図書室や図書コーナーを設け、学生に自由に閲読させている。

 協会スタッフの顧文君さんは「しっかり利用されていますよ」と、学生が利用する写真を見せてくれた。本を寄贈した個人や図書館などに対し、“領収書代わり”に現地に赴いて写真を撮影。学生らから感謝の手紙も続々と届き、ホームページで公表している。

 協会によると、贈る本は「日本語を学ぶ学生」ではなく、「日本語で学ぶ学生」向けだという。

 例えば、遼寧省の中国医科大学は一年目に日本語を学び、二年目から一部の授業を日本語のテキストを使い、日本語で行う。それら授業の参考となる本が求められる。

 こうした要望に応えるため、協会ではスタッフや運営委員を中国に派遣して各大学の希望を聴き、寄贈する本を選別している。

 人気が高いのは、デザインを学ぶ学生が参考にするための服飾、建築物や日用品の写真集など。日本語を学んでいない学生も利用するという。

 この協会の活動を支えているのが、本のリユースだ。本は個人のほか、不要になり処分に困った図書館、統廃合された学校の図書室、調べものはインターネット検索でよいという企業の資料室、出版社の倉庫などから寄せられている。

 個人からの申し出があった場合、事前に本のリストを出してもらう。必要とする本だけを宅配便で送ってもらっている。

 中には定年になったサラリーマンから、「自宅に死蔵していてももったいない。本も『第二の人生』を喜ぶだろう」と、仕事で参考にした個人所有の専門書や技術書を寄贈してくれるという。

 顧さんは「日本人は本当に本が好き。中国では大学間の口コミで、本をくださいという大学が増えている。活動は政治に左右されない着実な民間交流として評価が高い」と話している。

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 日本科学協会=電03・6229・5364、ホームページ(http://www.jss.or.jp/

ええ話しや。