アセチレン・ランプの夜

「スター・システム」のことがふと気になって注文した一冊。書名通り、この本では、「アセチレン・ランプ」が活躍する作品を集めたアンゾロジーに当たる。特定のキャラクターにのみ、スポットをあてたこんな本が編纂可能な作家、というのも、作品数が篦棒に多い、手塚治虫くらいなものではないか?
巻末の解説は、故・米沢嘉博氏。これがまた、的確な名文でねぇ……。解説と作品こみで、手塚スターの中では比較的地味なランプさんが、実は複雑な陰影を持つ実力者だったということが、しっかりと理解できました。
内容的なことをいうと……いやぁ、深い深い。
もう、冒頭の「落盤」からして、ストリーリーの面白さに加えて、回想シーンごとにタッチを変える、というマンガでしかありえない描写を効果的に使って作品を盛り上げている。これがなんと、1959年の作品。この程度のレベル作品では、手塚作品の中ではむしろ「小品」である、という事実が凄いを通り越して空恐ろしい。
本当に今更、なんだけど……すっげぇ作家だったんだな、手塚さん……。

アセチレン・ランプの夜
手塚 治虫著
河出書房新社 (2002.11)
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