損料屋喜八郎始末控え 山本 一力

損料屋喜八郎始末控え (文春文庫)
手堅い世話物。時代劇特有の語彙や文章はなれない人はとまどうだろうけど、それをおして読ませる力あり。「田沼失脚後」の寛永に舞台をとり、札差屋廻りの様々なトラブルを収めていく喜八郎周辺の人々を描く。この時代は、世相的に、バブル崩壊後の現在の日本に印象が重なる。
また、石高で支払われる武士の俸給を現金に変える「札差屋」は、同時に武士相手の「金貸し」的な機能も持っていて、そうした業種が含む資本主義的な論理と当時の武家社会の論理との確執などにも充分に描かれてる。
善悪で単純に割り切れない陰影のある人物造型が見事。