不況の波はオフィス街を確実に侵食しはじめている。 今日はあの課長、明日はあの派遣社員といった具合に、不況の波にのまれて姿をけすものは後をたたない。 寒空の下、人々は足元をみながら不機嫌な顔で通勤する。
か細いその糸が垂れてきたとき、誰よりも早く気づいた者がいた。自分で糸を手繰らず、他の虜囚たちに向かって「どうぞどうぞ」と先を譲った。案の定、糸が切れて大量の人が降ってくると、そいつは喝采を叫んだ。 ここは、地獄。
ソイツはいつでもすぐ傍にうずくまっている。それを忘れてはいけない。少しでも油断すると、いつでもあなたに音もなく襲い掛かってくる。 その、不安という獣は。
ぶったい。
引用をストックしました
引用するにはまずログインしてください
引用をストックできませんでした。再度お試しください
限定公開記事のため引用できません。