量子の新時代

SF小説がリアルになる 量子の新時代 (朝日新書 187)

SF小説がリアルになる 量子の新時代 (朝日新書 187)

量子論ってのは、得に門外漢にとっては「わかりにくい」分野だと思うのだが、この一冊はその歴史から基本原料、現在の状況まで、難解な専門用語や数式をできるだけ排し、平易に解説していると思う。
このわたしでさえ、それなりにわかったつもりになれるのだから、実にいい入門書だ。いや、一般向けの解説書として、こうした性質の本はやはり必要なのだよ。
今までピンとこなかった多世界解釈や観測による収斂について、かなりかみ砕いて解説されていたし、量子力学から量子情報学へ、という現在の流れ、ひょうっとしたら意外に近い将来に実用化されるかもしれない量子コンピュータの話、相対性理論を完成させたあと、量子論を頑なに否定し続けたアインシュタインの逸話など、基本的な情報から現況、将来への展開までを、かなり要領よくかい摘まんで、素人にもわかりやすく紹介している。
新書としては十分な内容だと思うし、逆にこれ以上につっこんだ内容が知りたければ、多少苦労してでも難解な専門書に挑戦するべきなのだろう。