電子書籍の衝撃

電子書籍の衝撃 (ディスカヴァー携書)

電子書籍の衝撃 (ディスカヴァー携書)

第1章 iPodキンドルは何を変えるのか?
タブレット型ビューワーの台頭。
ハードウェアだけではなく、コンテンツの配布、販売やネットワークなどのインフラまでを含めて「製品」。
音楽がiTunesによって細分化、アンビエイント化したよう現象が、書籍にもおこりうる。
第2章 電子ブック・プラットフォーム戦争
日米の過去から現在まで、コンテンツの電子配信の歴史。
キンドルのシステムは、アップルが音楽でやったことの真似。 
「著作物」に関する権利、契約について、圧倒的にたち遅れている日本の出版社。そもそも、著作者と出版社のあいだで、明確な「契約」が存在していないことが多い。だから、「コンテンツ・ホルダー」とした多種多様な著作物を揃えて配信する能力がない。
第3章 セルフパブリッシングの時代へ
アマゾンDTPを実際につかってみたレポート。
プロモーションの問題。ソーシャルメディアが強い味方か?
マスモデルからニッチモデルへ。
セルフディビストリビューション、セルフパブリッシングの時代。
第4章 日本の出版文化はなぜだめになったか?
主として、「流通、取り次ぎシステム」への批判。
本来は雑誌に適用されるべき「再販制度」を書籍にも適用したため、いい本が読者の手元に届かない状況になっている……という論旨自体は特に目新しいものではないが、歴史的な説明とかが詳細に記述されていて説得力がある。
村上春樹涼宮ハルヒ、空恋の文体比較。携帯小説は、「文芸」ではなく「日常の延長」。郊外、地方の現実を反映したソーシャル文化の産物。著者と読者とのあいだに、意見のフィードバックが存在する。
第5章 本の未来
電子書籍の普及によって、書籍のアンビエント化が起こる。
読者とコンテンツとのマッチングを円滑なものにするために、コンテンキスト(文脈)の強化を。
マスモデルからマイクロインフルエンサーへ。
 

ざっと内容を要約すると、こんなもんか。
この著者さんの過去の著作と思想的にかぶるところは多々あるわけだけど、ものすごくおおざっぱにいえば、だいたいこの本で予想されたことは将来現実になるのだろうな、という気はする。
ただ、既存出版社も馬鹿ではないから、この流れに抵抗はするだろうし、一部は自分たちの体質を変えて新しい環境に適応して行くだろう。
個人的には、第3章のパートが大変に参考になった。
アマゾンにしろアップルにしろ、日本語環境にはまだやさしくないけど、いずれ日本語でもセルフパブリッシングが気軽にできる時代が、そう遠くない将来、確実にくる。
自前のコンテンツはあるし、これからも生産可能だしね。