珈琲時間

珈琲時間 (アフタヌーンKC)

珈琲時間 (アフタヌーンKC)

面白いおもしろい。それだけではなく、複雑。それこそ、コーヒーの香りを構成する成分のように、喜怒哀楽、人間がもちえるあらゆる感情がぶちこまれている、そんな短編集だ。
シュールな話から思わず笑っちゃう話、しみじみする話、泣ける話など、多種多様なパターンの「コーヒー」を巡る物語が納められている。舞台も、まあだいたいは現代なんだけど、ときおりひょっこりロボット刑事がでてきたり、海面が上昇して日本の都市部がほとんど水没した時代とかが当たり前の顔をして出てくるから油断ができない。
登場人物は、若干名、複数の物語をまたいで登場するキャラクターはいるものの、ほとんどが単一エピソードのみに登場するのみで、各エピソードの独立度はきわめて高い。
ひとつひとつの物語に割り当てられているページ数は意外と少なくて、構造としてはシンプルなのだけれど、そのぶん、力強い。
この一冊に、物語の面白さがぎゅっと圧縮されている印象。コーヒーに例えると、エスプレッソですな。
コーヒー好きにもそうでない人にも、安心してオススメできる一冊でした。