サクラダリセット 2

この二冊目で、シリーズの構造がはっきりしてきなたな、という印象。
岡絵里による魔女を巡る攻防、というのは、結局のところ一冊目で描かれた村瀬陽香による「桜田市」という管理システムをいかに破壊するか、あるいは、管理網から逃れるか、意味合いを反復しているわけで、動機や具体的な方法自体は違っていても、「社会秩序から逸脱」というベクトルは同じだ。前巻で敵対していた村瀬陽香が今回は協力者になり、主軸となる主人公や春崎美空でさえも、桜田市の監視システムを否定していた経緯が描写され、今回の巻末では、将来また同じような選択をしそうなことが示唆される。
抑圧的な社会と、それに反抗しようとする個人/若者との攻防が、何度も反復されているわけで、たぶん、そうした構造は。「住人のほとんどがなんらかの超常能力を持つ」という設定や個々の能力の裏をかきあう駆け引きなどの背景に隠れてあまり目立たなっていない。
この桜田市、膨大な住人の中から重要な能力者を選別/監視/管理する緻密さにおいてはとっても優秀で、処理能力としてみると、とてもではないけど地方都市の市役所レベルを軽く凌駕している。常識的に考えると、「こんなしっかりしたシステムを組み上げるくらいに老獪やつらに、ティーンエイジャーが勝てるわけないじゃん」と思うのだが、さて、どうなるか。
今のところ、「管理する側」にはっきりした顔が与えられておらず、行政組織の向こう側に押しやられているような描き方をしているのも、不気味さを増している。相手はどっかの大悪人、ではなく、「大多数の市民を守る」という動機で動いているお役所で、そのためには、この本の中で魔女がそうされていたように、個人の人権なんて平気で無視して蹂躙する……という、怖さ。
岡絵里にしろ、村瀬陽香にしろ、あるいは主人公にせよ、そうした「社会秩序に反抗する側」の動機は、どうみてもエゴイスティックになってしまうわけだが、感情移入する側の都合としては、それくらい可愛いげがあったほうがいいという気もする。
これまで体制側に組み込まれて唯々諾々と動いていた主人公が、今後、リターンマッチを企てたとき、また前回のように挫折をするのか、それとも今度はなんとか成功するのか。成功するにせよ、まったくの無傷ということはありえないだろう……と、先のことをいろいろ想像する楽しみがあるシリーズになったな、これ。