聖家族

聖家族

聖家族

思ったよりも、読みやすかったなぁ。
確かに長いしプロットは入り組んで入るけど、パーツパーツを見るとわりとエンタメのセオリーに従っているし、リーダビリティは普通に高い。割とB級テイストなアクション・シーンも多くて、うまく翻案すれば劇画化さえ可能なのかもしれない、とか思う。これが英語で書かれた物語だったら、ハリウッドは間違いなく版権押さえている。
キーワードは、三兄弟と東北。
時代は前後し、主役は目まぐるしく入れかわるが、次第に各登場人物の繋がりが明瞭になっていく。
異世、異種などの超自然的なファクターが時折はいりこむけど、基本、これは土地とヒトとが交錯する物語だ。
おそらく、この長々しくて複雑に入り組んだ物語は、個人と歴史を結びつけることを目的としているのではないか? 逆にいうと、過去という膨大な時間と肉体を持つ個人とをリアリティを維持しながらリンクさせるためには、これだけの複雑な構造と情報量を必要とした、というべきか。
現代の死刑囚からはじまり、その兄弟や家族、現代武者修業ノワール、見えない大学、新興宗教のお家騒動、中世、江戸、幕末、天狗、烏、犬……などなど、虚実が入り交じり、時代も飛び越えて東北各地を転々としながら数珠繋ぎに語られる物語群は、まあ、結局、血の繋がりに収斂していくんだけどね。
あー。
やっぱ、犬が目立つなぁ。狗塚だし天狗だし。
「ベルカ、吠えないのか?」のときも思ったけど、押井守あたりが映像化したがりそうだなぁ。
ベルカ、吠えないのか? (文春文庫)

ベルカ、吠えないのか? (文春文庫)