一天四海のマーガレット

サブタイトルにもあるとおり、ウ゛ェルヌの「80日間世界一周」のシュチュエーションをラノベ的なキャラクターと道具立てで仕立て直した一品。とはいえ、四ヶ所まわらなければならないチェックポイントのうち、最初の一カ所をクリアしていたところで終わっているから、うまくいけば全四巻完結予定、なのだろうな。
十七歳の没落貴族、借金まみれのボンボンが、地下室で錬金術士だったご先祖様が残した人造人間(はい。お察しの通り、おにゃのこ姿をしています)を誤って起動させ、その時に何故か自宅を爆発させて即座に逮捕。
東インド会社から「人造人間の残りの部品」と引き換えに釈放と膨大な報酬を目の前にぶら下げられて、世界一周の旅に出る……というのがだいたいの筋書き。
他にも大貴族令嬢の幼なじみとか、主人公を執拗に追い掛けるスコットランドヤードのへっぽこ警部とか、警部と一緒に主人公の後を追う東インド会社の女錬金工学者とかのキャラクターが登場するけど、それらの人物造形はあくまで「お約束」の範疇をでることがない類型的なもの。いや、それが悪いとはいいませんが。
税務署役人のマイクロフトさんとかその弟のやたら切れ者の学生がちらりと登場したり、と、「その時代ならでは」のくすぐりもちゃんと用意されている。
でもなぁ……せっかくの旅行物なのに、ロンドンを出発してからの後半部分よりも、ロンドンでアレコレする前半部の方が面白いってのはどうなのよ?
いや、なんとなく、事情は察することはできるんだ。資料不足とか、調査する時間が足りなかったとか、大方、そんなところだろうけど。
まあ、ウェルメイドな娯楽作品として割り切って読む分には、いいんじゃないっすか?