ボディ・アンド・ソウル

ボディ・アンド・ソウル (河出文庫)

ボディ・アンド・ソウル (河出文庫)

2002年11月から2003年七月まで、作家古川日出夫の生態を、主に一人称で、時折、妄想や回想、フィクションを交えて書き出した作品……表面的な「筋書き」を取り出してみれば、そういうことになるのか。
ただし、これは「小説」であって「エッセイ」ではない。ちゃんと、というべきか、しっかり、「小説=フィクション」でしか、この作品が成立しない仕掛が最初から、というか、タイトルからすでに施されている。周到に。
登場人物は、語り手である作家本人と、いかにも実在しています風な編集者数名、五歳年上の友人、小池さん、それに「僕の妻」チエ。
ただ……そうした、表面的な筋書きは、この作品の場合、あまり重要ではないのかも知れない。
ただただ、文体のノリが面白い。
歌うように読め、というか、演奏するつもりで読め、というべきか。
とにかく、音楽的であり、意味よりも先に、メロディやテンポなど、音楽的な「面白さ」が頭に飛び込んできて、気づくとページをめくっている、という具合。
巻末の、いしいしんじの「解説」も、いい。